■今回の印刷面白話は…一度書くと下の紙にも文字が!?複写伝票とノーカーボン紙の秘密

白・ピンク・クリーム色の複写伝票とボールペンを組み合わせた写真風の合成イメージ
写真合成イメージ(AI生成)。実在の商品・設備の撮影写真ではありません。
筆圧で染料と顕色剤が反応する仕組みの概念図
仕組みをわかりやすく表した概念図です。

伝票に名前や住所を書くと、下の紙にも同じ文字が写っている。そんな経験はありませんか?上の紙にしかペンを当てていないのに、どうして下の紙にも文字が現れるのでしょう。黒いカーボン紙を挟まなくても複写できる「ノーカーボン紙」には、目では見えにくい小さな仕掛けがあります。今回は、一度の記入で何枚もの記録を作る、複写伝票の秘密を紹介します。

この記事の要点

ノーカーボン紙の複写伝票は、筆圧で壊れたマイクロカプセル内の染料が顕色剤と反応することで、下の用紙にも文字が現れます。ペンのインクが紙を通り抜けているわけではありません。

  • 一般的な複写伝票では、筆圧がカプセルを壊して発色を起こします。
  • 上用紙・中用紙・下用紙には異なる加工があり、重ねる順番が重要です。
  • 用紙自体の色と、複写した文字の発色は別のものです。

1.ペンのインクが染み抜けている?

下の紙は、自分の表面で発色する

下の紙に文字が写ると聞くと、ペンのインクが用紙を通り抜ける様子を想像するかもしれません。でも、一般的なノーカーボン紙の仕組みは違います。用紙にあらかじめ用意された材料が、筆圧をきっかけに反応し、その場所で色が生まれるのです。

鍵となるのは「マイクロカプセル」。無色の染料を閉じ込めた、とても小さなカプセルです。上側の用紙の裏面などに塗られていて、ペンで書く力が加わるとカプセルが壊れ、中の染料が出てきます。

色を出す相手は「顕色剤」

染料が触れる相手は、下側の用紙の表面に塗られた「顕色剤(けんしょくざい)」です。顕色剤とは、染料と反応して色を現すための材料のこと。筆跡に沿ってカプセルが壊れ、染料が顕色剤と出会うため、下の紙にも同じ形の文字が現れます。

つまり、上の紙ではペンが文字を書き、下の紙では紙の材料が文字を作っています。二つの違う働きが同時に進んでいる、と考えると面白いですね。複写部分の文字色にも青や黒などがあり、紙の組み合わせによって選ばれます。

2.重ねる順番にも意味がある

上・中・下で異なる役割

一般的な複写伝票は、「上用紙」「中用紙」「下用紙」を役割に合わせて重ねます。上用紙の裏面にはカプセル、中用紙には表面に顕色剤と裏面にカプセル、下用紙の表面には顕色剤が用意されています。中用紙は、自分に文字を写しながら、さらに下の紙にも記録を渡す役割を担うのです。

二枚複写なら上用紙と下用紙、三枚以上ならその間に中用紙を入れるのが基本です。似た紙だからと順番を入れ替えると、材料の組み合わせが合わず、うまく写らないことがあります。見えない加工を正しい向きで組み合わせることが大切なのですね。

用紙の色と、文字の色は別の工夫

複写伝票には、白だけでなく、ピンクやクリーム、薄い水色などの用紙も使われます。用紙自体の色と、複写して現れる文字の色は別のものです。色違いの用紙なら、例えば「お客様に渡す分」と「手元に残す分」を見分けやすくできます。

また、どんな枚数でも同じ濃さで写せるわけではありません。下の紙ほど力が伝わりにくくなるため、複写する枚数や紙の厚さ、書くときの力なども仕上がりに関係します。記入後に下の用紙まで確認すると、書き直しの手間を減らせそうです。

3.「枠を刷る」と「文字を写す」

一枚の伝票に二つの仕事

伝票の項目名や罫線は、あらかじめ印刷しておけます。その後、人が記入した内容をノーカーボン紙の働きで複写する。伝票では、情報を記入するための枠を作る仕事と、その場で記録を増やす仕事が組み合わさっています。領収書や配送伝票など、同じ内容を別々の人が持つ場面に便利な仕組みです。

ノーカーボン紙には、カプセルと顕色剤を同じ面に塗った、一枚で発色するタイプもあります。使い道に合わせて、紙の作り方も一通りではありません。いつもの複写伝票を眺めると、紙は情報を載せるだけのものではなく、記録を助ける道具でもあることがわかりますね。

参考資料・出典

技術的な説明は、メーカー・印刷会社などの公開資料を参照しています。

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執筆・発行:ABポスター / 公開日: / 記事作成日:

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