■今回の印刷面白話は…傾けると絵が変わる!レンチキュラー印刷の不思議な仕掛け

カードを少し傾けたら、笑っていた顔が別の表情に変わった。平らな絵なのに、奥行きがあるように見えた。そんな不思議な印刷物を手にしたことはありませんか?電池も画面も使わずに絵の見え方を変える仕掛けのひとつが、「レンチキュラー」です。今回は、印刷した画像とレンズが組み合わさることで生まれる、ちょっと楽しい目の体験を紹介します。

カードを少し傾けたら、笑っていた顔が別の表情に変わった。平らな絵なのに、奥行きがあるように見えた。そんな不思議な印刷物を手にしたことはありませんか?電池も画面も使わずに絵の見え方を変える仕掛けのひとつが、「レンチキュラー」です。今回は、印刷した画像とレンズが組み合わさることで生まれる、ちょっと楽しい目の体験を紹介します。
レンチキュラー印刷は、細い帯状に組み合わせた複数の画像とレンズシートを利用し、見る角度によって届く画像を変える技術です。絵の切り替えや動き、奥行きのある見え方を表現できます。
この記事の目次
レンチキュラーレンズは、細長いかまぼこ形のレンズをたくさん並べたような形をしています。表面をよく見ると、細かな筋が一定の向きに並んでいることがわかります。このレンズが光の進む方向を変えることで、見る位置によって届く画像を変えられるのです。
不思議な見え方の主役は、特殊なインクだけではありません。画像の上に重ねる透明なレンズと、その下に用意する画像が一組になって働きます。普通の写真にシートを重ねるだけで、思い通りの絵の切り替えが完成するわけではないところがポイントです。
絵が切り替わる仕掛けを、二つの画像で考えてみましょう。画像Aと画像Bを細い帯に分け、それぞれの帯を交互に並べた画像を用意します。その上にレンズを合わせると、ある角度ではAの帯、別の角度ではBの帯が主に目に届くようにできます。
見る角度を変えると、目に届く帯の組み合わせも変わります。その結果、一枚の印刷物の絵が切り替わって見えるのです。実際には画像の加工とレンズに合わせた調整が必要ですが、「違う絵を、違う方向へ見せ分ける」と考えると、仕組みをつかみやすいのではないでしょうか。
表情の違う画像を組み合わせれば、顔が切り替わる表現にできます。動きの途中を写した画像を順番に組み合わせれば、傾けたときに動いているように見せることもできます。印刷物自体が動画を再生しているのではなく、見る方向に応じて異なる静止画像が見えているのですね。
ただし、どんな画像でも滑らかに動くわけではありません。使うレンズや画像の枚数、見る角度などに応じて、見え方は変わります。見せたい動きを欲張るより、ひと目で違いがわかる変化の方が、仕掛けの楽しさを伝えやすそうです。
立体感を出す使い方では、視点の違う複数の画像を用意します。左右の目に届く画像の違いを利用して、平面の印刷物にも奥行きを感じさせます。絵が切り替わるタイプも、立体に見えるタイプも、方向によって見える画像を変えるレンズの働きを活用しているのです。
これは材料を積み重ねて実物の形を作る3Dプリンターとは、別の仕組みです。また、光の干渉や回折を利用するホログラムとも同じものではありません。「見ると不思議」という印象が似ていても、裏側の技術にはそれぞれ違いがあります。
レンチキュラーは、カードやステッカー、パッケージ、広告パネルなどに利用されています。手に持って傾けるカードと、歩きながら眺める広告パネルでは、見る人の動きが違います。どちらの方向に動くと絵が変わるのか、どこから見るのかも、表現の一部になるのです。
例えば、近づく方向によって別の絵が現れる展示なら、見つけた変化を誰かに伝えたくなりそうですね。一方、必ず読んでもらいたい情報は、切り替えの途中でも伝わるかを確かめたいところです。面白い演出と、情報の読みやすさを両立する工夫が必要になります。
一枚の画像を美しく刷るだけでなく、「どう見てもらうか」まで設計できるのが印刷の面白さ。次に絵が変わるカードを見つけたら、ゆっくり角度を変えてみてください。小さなレンズが届ける、違った景色に出会えるかもしれません。
技術的な説明は、メーカー・印刷会社などの公開資料を参照しています。
執筆・発行:ABポスター / 公開日: / 記事作成日:
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