■今回の印刷面白話は…新聞のインクは泡で取り除く!?古紙を再生する「脱墨」の秘密

読み終えた新聞には、黒い文字や色鮮やかな写真がびっしり。これを原料にして、また紙を作ると聞くと、「あのインクはどこへ行くの?」と不思議に思いませんか?消しゴムで一文字ずつ消すわけにはいきませんよね。そこで活躍するのが、古紙からインクを取り除く「脱墨」という工程です。しかも、その仕事を手伝うのは小さな泡。今回は、印刷した紙が次の役目へ進むときの、ちょっと意外な仕組みを覗いてみましょう。

読み終えた新聞には、黒い文字や色鮮やかな写真がびっしり。これを原料にして、また紙を作ると聞くと、「あのインクはどこへ行くの?」と不思議に思いませんか?消しゴムで一文字ずつ消すわけにはいきませんよね。そこで活躍するのが、古紙からインクを取り除く「脱墨」という工程です。しかも、その仕事を手伝うのは小さな泡。今回は、印刷した紙が次の役目へ進むときの、ちょっと意外な仕組みを覗いてみましょう。
脱墨(だつぼく)は、古紙から印刷インクを取り除く工程です。代表的な方法の一つが、繊維から離したインクを細かな泡に付け、浮き上がった泡と一緒に除去するフローテーションです。
この記事の目次
「墨を脱ぐ」と書く脱墨は、古紙に付いている印刷インクを取り除く工程のことです。墨という字が使われていますが、対象は筆で書いた墨だけではありません。新聞や印刷物に使われたインクも、この工程で紙の繊維から分けていきます。
紙の上では、文字や写真として整然と並んでいたインク。それをもう一度紙の原料に戻すときには、情報としての形を保つ必要はありません。目指すのは、印刷前の一枚をそのまま取り戻すことではなく、紙を作る繊維を再び使えるようにすることなのです。
紙は、細かな繊維が絡み合ってできています。古紙の再生では、水などと混ぜて紙をほぐし、繊維が水の中に分散した状態にします。脱墨では、薬剤の働きやかき混ぜる力などを利用し、繊維に付いたインクをはがしていきます。
ここで大切なのは、「紙をほぐす」と「インクを取り除く」が別の役目だということ。紙がばらばらになっても、離れたインクが同じところに残っていたら、そのままきれいな原料になるとは限りません。そこで、次の分ける工夫が必要になります。
脱墨に使われる代表的な方法に、フローテーションがあります。日本語では「浮選」とも呼ばれます。古紙をほぐした液の中に細かな気泡を作り、繊維から離れたインクの粒を泡に付けて浮き上がらせる仕組みです。上に集まった泡を取り除くと、インクも一緒に外へ運び出せます。
泡と聞くと、汚れを溶かして消してしまうように思えるかもしれません。でも、ここでの見どころは「分けて、運ぶ」こと。水の中にある繊維とインクを、泡の助けを借りて分離しているのです。見慣れた泡が、紙づくりの現場では運び屋になっているとは面白いですね。
脱墨剤には、物質どうしの境目で働く「界面活性剤」などが使われます。インクを繊維からはがしたり、泡で取り除きやすくしたりするための工夫です。単に水に空気を入れれば、どんな印刷物も同じように処理できるというわけではありません。
例えば、紫外線を当てて固めるUV硬化型インクは、細かくほぐしにくいことが課題になります。日華化学は、こうしたインクの除去に対応する脱墨剤の開発を紹介しています。印刷するときの便利さだけでなく、使い終えた後に分けやすいかどうかにも、技術が関わっているのです。
日本製紙連合会の用語集では、印刷インクを取り除いて漂白した古紙パルプを「脱墨パルプ」と説明しています。新聞用紙や印刷用紙、トイレットペーパーなどの原料に使われます。一方、脱墨していない古紙パルプは、段ボール原紙などにも使われます。
つまり、再生紙はどれも同じ工程で真っ白にする、というわけではありません。何を原料にし、次にどんな紙を作るのかによって、必要な処理は変わります。紙の再生には、用途に合った原料へ整えるという考え方があるのですね。
再生の現場を助けるのが、回収するときの分別です。新聞、雑誌、段ボールなどを種類ごとに分けることで、原料の品質をそろえやすくなります。ただし、回収できる紙や出し方は地域によって異なるため、お住まいの自治体などの案内に合わせてください。
文字や写真を紙に残すのが印刷なら、次の紙づくりへ進むためにインクを分けるのが脱墨。その間を小さな泡がつないでいると思うと、読み終えた新聞の見え方も少し変わりませんか?今度古紙をまとめるときには、一枚の紙が次の役目へ進む舞台裏も思い出してみてください。
工程や技術の説明は、業界団体とメーカーの公開資料で確認しています。
執筆・発行:ABポスター / 公開日:
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