■今回の印刷面白話は…チケットはなぜきれいにちぎれる?小さな「ミシン目」のお話

コンサートや展示会の入り口で、チケットの端をピリッと切り取ってもらったことはありませんか?はさみを使わないのに、小さな半券だけが離れていく。何気ない動作ですが、紙をよく見ると、切り取る場所には小さな切れ目が並んでいます。今回は、印刷物を「見せる」だけでなく「使いやすくする」、ミシン目の工夫を覗いてみましょう。

コンサートや展示会の入り口で、チケットの端をピリッと切り取ってもらったことはありませんか?はさみを使わないのに、小さな半券だけが離れていく。何気ない動作ですが、紙をよく見ると、切り取る場所には小さな切れ目が並んでいます。今回は、印刷物を「見せる」だけでなく「使いやすくする」、ミシン目の工夫を覗いてみましょう。
ミシン目は、紙に細かな切れ目を並べて切り離しやすくする加工です。切れた部分とつながった部分が交互にあり、その間隔や形を用途に合わせます。インクで描いた切り取り線とは役割が異なります。
この記事の目次
ミシン目加工は、紙に破線状の細かな切れ目を入れる加工です。チケットの半券やクーポン券など、必要な部分を手で切り離したい印刷物に使われます。線のように見えますが、紙そのものに手を加えているところがポイントです。
黒い破線と、はさみの絵が印刷された「切り取り線」もありますね。こちらは、どこを切るかを目で伝える案内です。インクで破線を描くだけでは、紙に切れ目は入りません。似た見た目でも、場所を知らせる印刷と、切り離しやすくする加工には違う仕事があるのです。
ミシン目を近くで見ると、切れているところと、紙がつながっているところが交互に並んでいます。端から端まで完全に切ってしまえば、半券は最初から別の紙になってしまいます。使う前は一枚として扱い、使うときに分けられる。そのための小さなつながりなのですね。
印刷会社のウイル・コーポレーションは、この切れた部分とつながった部分の間隔を「ピッチ」と説明しています。同じミシン目でも、切り取り用なのか、折りやすくするためなのかで、適したピッチは変わります。小さな線の並びにも、用途に合わせた調整があるのです。
ミシン目で切り取った紙の縁を眺めると、小さな凹凸が見えることがあります。一方で、ぱっと見ただけでは切れ目に気付きにくいほど細かな加工もあります。「マイクロミシン」と呼ばれるもので、切れている部分もつながっている部分も短くなっています。
紙加工会社の石川紙器は、マイクロミシンの用途として名刺や価格表示カード、販売促進用のPOPなどを紹介しています。POPは、店頭で商品の特徴や価格を伝える掲示物のことです。切り離せればよいだけでなく、その後に人に見せる縁の仕上がりまで考えられているのですね。
ミシン目は、印刷に付随する設備や製本加工機、型で抜く機械などで入れられます。どの設備でも同じ形に加工できるわけではなく、切れ目の形や位置によって使える設備が変わります。紙に色を載せた後にも、使う形へ近付ける工程があるのです。
例えば製本機器メーカーのホリゾンには、用紙サイズやミシン目の位置を入力し、ミシン刃の切り込みなどを自動設定する機械があります。一見単純な一本の線でも、位置や刃の設定を揃える工夫が必要なのですね。
切り離す工夫が役立つのは、入場券だけではありません。応募はがきが付いた案内状や、クーポン付きの印刷物など、一枚の中から必要な部分を分けて使う場面にもミシン目が登場します。読むときは一緒、使うときは別々というわけです。
ラベルメーカーのヒサゴには、台紙にミシン目を入れ、印刷したラベルを台紙ごと一枚ずつ切り離せる製品もあります。ラベルをはがす前に分けられるので、必要な分だけ持ち運ぶことができます。「紙を分ける場所」が、使い方そのものを変えている例ですね。
印刷物を手にすると、写真や文字へ目が向きがちです。でも、手で持つ、折る、切り離すといった動作にも、その紙ならではの工夫が隠れています。ミシン目は、読んだ後の行動まで考えられた加工の一つといえそうです。
次にチケットや切り取り式の案内を受け取ったら、使い終わった後に縁を少し観察してみてください。印刷された線なのか、本当に小さな切れ目があるのか。いつもの「ピリッ」の中に、紙を使いやすくする仕事が見つかるかもしれません。
加工や機能の説明は、印刷・紙加工会社と機器・用紙メーカーの公開資料で確認しています。
執筆・発行:ABポスター / 公開日:
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